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92話 先の話

Penulis: ニゲル
last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-02 09:22:19

「昨日キュアリンともう一度話し合って色々確かめたけど、やっぱり今の波風はブローチの使用者にしか見えない幽霊に似た状態だ。それにさっき高嶺のお義父さんにブローチを少し使わせてみたけど……この様子じゃある程度キュアヒーローの適性がないと見えないことも分かった」

なら昨日波風ちゃんの両親にブローチを渡していても見えなかった可能性が、ぬか喜びさせるだけの可能性が高かったというわけだ。

「それでその……アタシはもう……そういうことでいいの?」

「……ごめん。体ももう残っていないし、物理的に存在しない以上……今ここに話せる状態でいること自体が奇跡なんだ……もちろん最善は尽くすよ。でも多分……」

薄々分かってはいたし、波風ちゃん自身もほぼ確信していた。だが博識の彼のお墨付きを貰ったことによりそれは更に信憑性を持ち、私達を澱んだ気持ちにさせるには十分だった。

「それで次に先日逃したあの二人のイクテュスについてなんだけど……」

生人君はそれを察知し少しでも私達の気分を誤魔化そうとしてくれたのか、それ以上は触れずに次の話へと流す。

「多分川を通じて海に逃げたみたい。地上なら夜目の効く鳥とか居るけど、魚だと目が良いのがあまり居ないから索敵や追うことが難しくて……」

「監視カメラとかには映ってないの?」

「キュアリンに確認してもらったけどダメだったみたい。あれはそもそも対人間を想定したものだし、イクテュス相手だと死角が多すぎる」

そう上手くはいかないようだ。大体地球の技術では対抗できないからこそのキュアヒーローや生人君なのだから当然なのだが。

「そういえばイクテュスは元の生物というか、モチーフがある感じなんだよね?」

ここまで受けに回っていたお義父さんが口を開く。彼は生物学を専攻している研究者だ。何か彼にしか見えない事があるかもしれない。

「そうだけど……もはやあれは別の生物です。行動も元と思われる生物とは大きくかけ離れてますし……」

「元の生物とかけ離れてる……? まさか……」

そして彼は私達では気づけない何かを発見し、しばらく唸りながら長考する。

「少し調べる事ができた。生人君。悪いけど少しの間高嶺と……波風ちゃんを頼めるかな?」

「もちろん……それよりどこへ?」

「研究所に。ちょっと確かめたいことがあって……」

彼はパパッと支
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